9月の大津出演舞台のご報告
台風襲来が続いておりますが、皆様大過なくお過ごしでしょうか。嵐の襲来にもめげず、GAG団員の2名はそれぞれの舞台活動にいそしんでおります。9月は特に2名とも本番舞台が多いのですが、その中で、無事に終了いたしました大津出演の2つの舞台について、まずはご報告したいと思います。
まずは、9月11日(日)、練馬文化センターで開催された、ガレリア座 第28回公演。カールマン作曲「マリツァ伯爵令嬢」。
一幕ラスト
ガレリア座の主宰である八木原良貴氏は、日本でも指折りのオペレッタ研究家であり、オペレッタ楽譜の蒐集家でもあります。その豊富なライブラリーから、知られざる名曲を紹介する新宿オペレッタ劇場の主宰者でもある八木原氏。そうなると、彼のホームグラウンドであるガレリア座が、オペレッタを得意としているのも当然のこと。これまでも、オッフェンバックの「美しきエレーヌ」、ヨハンシュトラウスの「ベニスの一夜」など、あまり日本で上演される機会のない作品や、ミレッカーの「乞食学生」、ヨハンシュトラウスの「王子メトゥザレム」などの日本初演、あるいは世界でも滅多に上演されない作品にも挑戦してきました。
中でも、カールマン作品は、ガレリア座の十八番の一つ。それも、カールマン作品の中では最も有名な「チャールダッシュの女王」には手を出さず、共に日本初演となる、「モンマルトルのすみれ」「シカゴ大公令嬢」を上演。大津はその両作品でプリマを演じてきました。そういう意味では、大津にとっても、カールマン作品はとても大事なレパートリーの一つになっています。(ガレリア座の公演にいらっしゃるお客様の中には、未だに大津のことを「すみれちゃん」と呼ぶお客様もいたりして)
さて、今回上演された「マリツァ伯爵令嬢」。実は今を遡ること20年前、1996年に、ガレリア座第五回公演として上演した作品。この舞台で、大津は、主人公タシロの妹であるリーザを、そして北は、そのリーザと恋に落ちるジュパン男爵を演じました。今回はその再演となりますが、20年前の小さな舞台とは比べ物にならない、スケールの大きな舞台となりました。
20年前はこんな舞台でした汗。ちなみに右が大津、左は北です。現在と見比べないこと。大津の後ろの謎の絵画は、北が自分でデザインして描いたもの。
今回はこんなの。マリツァのおうちが立派です。ちなみに、マリツァのおうちの前でくつろいでいるのは、子役のお嬢さん。
最近でこそ、「チャールダッシュの女王」に次いで日本での上演機会も多い「マリツァ伯爵令嬢」ですが、20年前は知る人ぞ知るカールマンの隠れた名作、と言われていました。カールマンの音楽はその時代背景を映して、異文化衝突、というのを一つの大きなテーマにしているのですが、「マリツァ伯爵令嬢」の中では、三人のソリストが3つの音楽潮流を明確に代表しています。アメリカ音楽にかぶれた洒落男のジュパン、ウィーンの粋を象徴するウィンナワルツを歌うタシロ、そして、ハンガリーの土と熱い血をたぎらせるマリツァ。この3つの音楽はそのままカールマン音楽のクロスオーバー的な魅力の源泉でもあり、「マリツァ伯爵令嬢」 がカールマンの代表作の一つ、と言われる所以でもあります。
大津は、ハンガリーの土の熱さと誇り高さを併せ持つマリツァ伯爵令嬢を情熱的に演じました。役柄と、マリツァの邸宅での物語という設定もあり、今回はとにかく衣装替えがたくさんありましたので、いくつかご紹介しておきましょう。
赤いドレス。パーティの場面で。
民族衣装風
普段着。飼い犬は「ベス」という名前です。
お部屋着。終幕のカギを握るボツェーナ侯爵夫人役の中江さんと共に。
オペレッタらしい華やかさと、ウィンナオペレッタの黄昏を濃厚に感じさせる哀愁。ガレリア座得意のウィンナオペレッタに、お客様から沢山の温かい拍手をいただくことができました。
さて、次にご紹介するのは、9月19日(火)、台風襲来する中、渋谷の伝承ホールで開催された、東京室内歌劇場公演「シャンソン・フランセーズ」。
お洒落なチラシですねぇ。
今回大津が挑戦したのは、コクトー作詞、 ミヨー作曲「キャラメル・ムー」。コクトーの倒錯的かつナンセンスな歌詞にミヨーが実にコケットなメロディをつけた、なんとも不可思議な味わいのある曲。今回の公演のプロデューサーであり、ピアニストである田中知子さんが、「大津さんにぴったり」とあてがってくださいましたが、癖の強い曲に負けない歌い手のキャラクターと、相当の歌唱技術が噛み合わないと歌えない曲で、大津も相当難儀しておりました。自分で考えた振り付けもしっくり決まって、お客様の受けもかなりよかったようです。
「キャラメル・ムー」というタイトルを聞いた時に真っ先に浮かんだのが、細野晴臣さんの「キャラメル・ママ」だったんだけど、参考映像ということで田中さんが貸してくださったのが、コシミハルさんの「キャラメル・ムー」のパフォーマンスで、これが細野晴臣ファミリーの集う音楽番組の中の1コーナーでした。ひょっとして「キャラメル・ママ」って、この曲から来たんですかね?拝見した映像は、コシミハルさんらしいぶっ飛んだパフォーマンスだったんですが、対抗する、というわけじゃないけど、プロデューサーさんと大津が用意した衣装がこちら。
きゃりーぱみゅぱみゅですかね。
シャンソンのスタンダードナンバー、コミックソング、そして「キャラメル・ムー」のような個性的な曲も交えてのこの演奏会。テーマとなった「愛しかない時」は、つい先日パリを襲った同時多発テロの際、パリの至る所で歌われた歌なのだそうです。フランス革命、普仏戦争、第一次大戦、第二次大戦、そしてテロ、と、無数の市民の血が染み込んでいるパリという街。そこに生まれたシャンソンが、無慈悲な死や別れを常に意識しながら、それでも刹那の愛を歌い続けてきた、その積み重ねた歳月の重みを感じさせる、感動的な演奏会でした。えびさわなおき。さんが弾くアコーディオンが実にパリっぽい。アコーディオンって、本当にヨーロッパの香りのする楽器ですねぇ。
ふたりの天使をデュエットしてくださった中島佳代子さんと。
プロデューサー兼ピアニストの田中知子さんを、橋本美香さんと大津のコスプレで挟んで。田中さんが登場した時はユジャ・ワンかと思いました。衣装だけじゃなくピアノも色気たっぷりで悩殺。
出演者の全員写真。人間味あふれる低音が魅力の田辺いづみさん、芸達者の男声陣、見事なフランスの風を届けてくれた女声陣、お洒落なのに生々しく、涙のあとに笑いがあり、そして何より、愛のある。とても素敵な演奏会でした。
また一つ、素敵な舞台が終わり、そしてまた、次に向かって進んでいきます。今後も活動報告してまいります!お楽しみに~。