「子供と魔法」長谷部画伯のイラスト一挙掲載!
本日、渋谷エレクトーンシティで開催された、東京シティオペラ協会主催公演、「2つのオペラ」無事終演いたしました。先日この日記で緊急告知したのですが、この演奏会の第二部で、GAG公演の「南の島のティオ」でずっとイラストを担当してくれている、長谷部和也さんのイラストスライドが、公演を彩りました。物語のファンタジー性と多層的な意味世界をしっかり描きこんだこのイラスト、本番会場の映写だけで終わってしまうのはもったいないねぇ、という話をし、長谷部さんご本人に、このブログでの掲載許可をいただいて、全イラストを掲載します。ただ、オリジナル画像をそのまま掲載すると、色々と問題が起こりそうなので、サイズは40%に縮小しております。本番会場の雰囲気を、少しでも味わっていただければ幸いです。
オープニング。もうこれ見ただけでワクワク!
宿題は嫌だ!ママの言いつけを破り、リスをいじめて、壁紙を破いて、子供は大暴れ!
突然魔法がかかったように動き出し、歌いだす家具たち。これであの子に蹴飛ばされない。あの子にはうんざり、と歌う椅子たち。振り子を取られて壊れてしまった時計は、「私を壊さなければこの家は平和だったのに。誰も死ぬこともなかったろうに」と歌います。
子供に壊されてしまったティーポットと中国茶碗は、ボクサーとカンフーの達人風に子供を脅しつけます。一発、ノックアウトしてやるぜ!ハラキリ、セッシュー、ハヤカワ、これがチャイナの技よ!
おびえてぶるぶる震えながら、暖炉のそばに寄ってきた子供に、暖炉の中から火が飛び出してきます。悪い子はお仕置きだ、悪い子はどこにいる?
子供に破られてしまった壁紙に描かれた羊飼いの少年と少女。引き裂かれた二人の悲しい恋を歌います。もう羊たちにも会えない、あの子は生まれた時は僕らに微笑みかけたのに・・・
後悔にさいなまれる子供の前に、破り捨てられた絵本のお姫様が現れます。子供の初恋の人。でも子供が本の後半を破り捨ててしまったから、お姫様を助けてくれる王子様は永遠に現れない・・・
本を探す子供が開いたのは算数の教科書。算数の老人が飛び出してきて、めちゃくちゃな計算問題をわめきたてます。ロクニ、ジュウゴ!ハチゴ、サンジュウ!デカメートル、キロメートル、タマシイノジュギョウヲ、ハジメートル!
あたまがぼんやりしてきた子供の前に、続いて現れたのは、白猫と黒猫。盛りのついた猫たちは絡み合い、子供が見てはいけない大人の世界を垣間見せます。
家を飛び出していった猫を追いかけて、庭に出た子供。夜の空気に触れて心地よい気分になったのもつかの間、子供のいたずらで傷つけられた木や、夫を奪われたトンボが子供を責めます。お前が盗んだナイフでつけたこの傷が痛む・・・私の愛するあの人をお前はどこにやってしまったの?壁にピンで留めちゃった・・・
妻を殺されたコウモリの怒りの歌。そして、カエルたちの踊り。子供はカエルに近づいて、捕まえようとします。
リスは、籠から逃げ出したばかりで弱っています。ゲホゲホとせき込みながら、カエルに、「お前、捕まるぞ!」と警告するのですが、カエルは聞く耳を持ちません。子供はリスに、僕が君を捕まえたのは、君が可愛くて、よく見たかったから、と歌いかけます。リスと子供の間に、他の動物にはない心の通い合いが見える一瞬。
孤立感を深める子供・・・たまらず、「ママ!」と叫ぶ子供を、庭の木や動物たちが見つけて、責めつけます。悪い子、意地悪な子だ!リスはそんな子供をかばって、かえって傷ついてしまいます。
傷ついたリスを、自分のリボンで手当てした子供は、自分も傷ついて気を失ってしまいます。思いがけない子供の優しさに触れた動物や植物たちは、なんとかして子供を救おうとします。僕たちじゃこの子を治せない。そうだ、この子が呼んでいたあの人を呼ぼう。ママ、ママ!
子供を許し、母親の胸に届ける動物と植物のコラール。そして、やさしいお母さんの胸に抱かれて、子供は心から安堵して呟くのです。「ママ!」
ラヴェルが、亡き母親への思慕と、孤独な自分を、自責の思いや後悔、そして万物への愛をこめて描きこんだオペラ「子供と魔法」。渋谷エレクトーンシティがラヴェルの想いに染まった、素敵な時間を過ごすことができました。長谷部くん、掲載許可ありがとうございました。本当にいいイラストだよねー。GAGの「南の島のティオ」のシリーズも、しばらく凍結状態になっているけど、いつか再開するからねー。