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GAG(Galleria Actors Guild)は、アマチュアオペラ制作集団「ガレリア座」で知り合った大津佐知子と北教之が、1996年に結成した劇団です。二人芝居を中心とした少人数の演劇・朗読劇などを不定期に上演し続け、2013年には第十回公演を開催しました。演劇だけでなく、歌曲なども交えたお茶会などを今後も発表し続けていきます。

フィックスホールこけら落としコンサート、無事終了いたしました!

 

桜は満開ですが、お花見日和に恵まれない不安定な天候が続いていますね。皆様いかがお過ごしでしょうか?

 

さて、先日このブログでご案内しました、GAG団員出演のオペラコンサート、無事終演いたしました!

 

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 4月3日夜の部出演者のみなさまと集合写真

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4月1日のオペラハイライト、「ランメルモールのルチア」出演者にて。

 1日の夜のオペラハイライトコンサート、3日の昼のガラコンサート、3日の夜のガラコンサート、という3つの演奏会。大津はこのうち、1日のオペラハイライトの一演目「ランメルモールのルチア」と、3日の夜のガラコンサートに出演。北は、3つの演奏会全ての司会進行ナレーションを担当しました。結果、北は、総勢20名以上の歌い手さん達のパフォーマンスをかぶりつきで拝見する、という稀有の体験をさせていただきました。そうなるともう、一つ一つの演目について感想を述べ始めるときりがなくなってしまうので、このブログでは、GAG団員の関わった部分についての感想と、舞台裏の話に絞って書かせていただきます。

北は、以前、東京シティオペラ協会の理事長、川村敬一さんの「冬の旅」全曲演奏会でナレーションを担当。そのご縁で、今回の司会進行を仰せつかりました。基本的にアドリブがあまり上手じゃない人間なので、自分の喋る内容は全て原稿に書き起こすのが、北のスタイル。曲順や全体の流れをヒアリングし、演奏されるオペラや歌曲の背景を調べ、歌い手さんや主催者から「こんなことも言ってほしい」と伺ったご要望などを盛り込み、原稿を作っては、それをフィードバックし、という作業を繰り返しました。

 準備周到で仕事が丁寧、といえば聞こえはいいんですが、主催者からすると、逆に、「書いたものをただ読み上げるだけの退屈なナレーションになっちゃうんじゃないか」と不安をあおる結果になったみたいで、直前の3月31日になって、「なるべくアドリブを入れて、ただ原稿を読むだけにはしないでくださいね」という注文が入る。なので、ギリギリになって、「こういうことも適当にしゃべってみるかな」なんていう「ネタメモ」を原稿の余白に書きなぐって臨む。ネタメモの中には、本番当日のリハーサル中にネットで検索して調べたネタや、その場の演奏を聞きながら、「この演奏だったらこういうこと言ってもいいかも」と思いついてその場で書き込んだものも。

 

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こんな感じです。

アドリブであっても喋っている文章に破綻をきたさない一流の司会者と違い、やはりところどころ、文法的におかしな文章や、オチがうまくつかなかったくだりなど、「しまった、やらかした」と思う瞬間は多々ありました。でも、パフォーマーの皆さんの熱のこもった質の高い演奏で会場全体の熱がぐっと高まった中、多少しどろもどろになっても大目に見ていただける空気が醸成されていたおかげで、なんとか務め上げることができたかな、と思います。

 家族ネタで受けたのは「禁じ手」として、個人的には、アドリブで盛り込んだ「ウンチク」話にお客様がふむふむと頷いてくださったり、「へぇ」と声を上げてリアクションしてくださったりするのが本当に嬉しい。3日のガラコンサートの夜の部、角地正直さんのお子さんネタや、神田宇士さんの高校教師ネタなどもメモだけを頼りにしたその場のアドリブだったんですが、ちょっと調子に乗りすぎた部分はあるとはいえ、お客様は結構喜んでくださったみたいで、とにかく温かな優しいお客様に感謝するばかりです。

 さて、もう一人のGAG団員の大津は、1日のハイライトで、宿願ともいうべき「ランメルモールのルチア」に挑戦。一幕のアリア、二重唱、そして超難曲の「狂乱の場」を歌い切りました。

グルベローヴァナタリー・デセイネトレプコなどが伝説的な名演を残しているこのルチアへの初挑戦に備え、師事する高橋薫子先生(日本有数のルチア歌い)の指導を仰いだそうですが、一声歌っては「違う」「ダメ」「違うって言ってるでしょ」と、いつになったら最後までたどり着くのだろう、とめまいのするような日々だったそうです。北の師匠の立花敏弘先生が、「薫子先生はなかなか前に進ませてくれないけどね、それで途中で挫折しちゃだめ。最後までたどり着いた人だけが生き残る」とおっしゃっていて、まさに、一つ一つの歩みを確かめながら断崖絶壁を上っていく、途中であきらめたら落ちていくだけ、というギリギリの作業。

 「一週間1万円で暮らしましょうって言っている人が、いきなり月曜日にフルコースでステーキ食べるの?それじゃ週末にはごま塩ご飯になっちゃうでしょうが!」(だからペース配分は大事)といった、薫子先生特有の温かいユーモアあふれるレトリックと、目の前で歌ってくださる見事なお手本歌唱を支えに、なんとかたどりついた本番当日。フルートとの掛け合いを中心とした緊張感あふれるクライマックスに向けて、一つ一つの音符を正確に踏みしめていくプロセスは、フィギュアスケートや体操の一連の演技のような緊張感に満ちていて、お客様もその緊張感をしっかり共有してくださり、一期一会の高密度の空気と時間を作り出すことができました。

 3日のガラ・コンサートで大津が挑戦したのは、メノッティ作曲「領事」。国外への亡命を望みながら、官僚制度の厚い壁に阻まれて破滅していくヒロインのアリア「このために私たちは来ているの」は、今まさに世界を揺るがしている、欧州になだれ込むシリア難民の悲劇にも共通する、時代を超えたテーマを持っています。

実は、演奏前の曲紹介のナレーションで、「書類がなんだっていうの?私の名前はマグダ、年齢は33歳、仕事は待つこと」と、北が歌詞の一部を紹介したのですが、直前のリハーサルを聞いて、「一番耳に残る部分の歌詞の日本語訳に変えようか?」と大津に相談しました。すると、大津は、「それだとネタバレになっちゃうからいい」と。自分の英語歌唱で、歌のメッセージをしっかり客席に届けたい、という意思表示でした。そのくだりの歌詞は、リハーサルと本番と2回しか聞かなかった北の耳にしっかり残っています。客席にも間違いなく届いたと思いますし、同じ慟哭が、今まさにトルコやギリシアで鳴り響いているのだと思います。

  

My name....is woman.

Age...still young.

Color of hair...gray.

Color of eyes....color of tears.

Occupation...waiting...waiting...waiting,waiting,waiting,WAITING!!

  

フィックスホールの親密度の高い空間で、英語、という多少馴染みのある言語であることも手伝って、プロテストソングとしての性格も持つこのアリアの普遍的なテーマが、一人一人のお客様の心にしっかり届いた手ごたえがありました。

 調布という、我々の地元に生まれたこのフィックスホール。最大客席数150席、というこじんまりした空間ながら、コンクリートの打ちっぱなしの内装とアーチ型の天井、解放感あるロビーなど、非日常的な「ハレ」の空間としての魅力の詰まった素敵なホールです。このホールの出発をお祝いする演奏会をお手伝いできたことは、GAG団員の二人にとって大きな財産になりました。今後のこのフィックスホールの発展を祈りつつ、GAG団員はまた、次の舞台に向けて進みます。ご来場いただきましたお客様、共演者のみなさま、素晴らしい時間を、ありがとうございました!