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GAG(Galleria Actors Guild)は、アマチュアオペラ制作集団「ガレリア座」で知り合った大津佐知子と北教之が、1996年に結成した劇団です。二人芝居を中心とした少人数の演劇・朗読劇などを不定期に上演し続け、2013年には第十回公演を開催しました。演劇だけでなく、歌曲なども交えたお茶会などを今後も発表し続けていきます。

3月初旬のGAG団員出演舞台、無事終演いたしました!

先日告知いたしました、GAG団員出演舞台、無事終演いたしました!

 

まずは、大津出演の舞台、オペラを作ろう!「小さな煙突そうじ」のレポートから。

大津は、第一幕・第二幕では、劇団員ブルース、第三幕では、煙突そうじのサムを助けるブルック家の長男、ゲイ・ブルックを演じました。

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第一幕・第二幕、劇団員ブルースくん

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第三幕、煙突そうじの少年サム役の植木稚花さんと、ゲイ・ブルックくん

第一幕と第二幕では、劇団員たちが、オペラ「小さな煙突そうじ」を作る、というオペラ制作の舞台裏のお話を、音楽のほとんどないストレートプレイとして見せ、そこで聴衆も一緒に参加する合唱の練習をし、そして、第三幕のオペラ本編となる、という、二重三重の仕掛けを持ったこの舞台。

日本では、演劇、という舞台表現が、歌舞伎から派生、あるいは海外から輸入されたとしても、あくまで歌舞伎のアンチテーゼとして発展したという土着性を持っている一方で、オペラという舞台表現はもともと国内に根っこがない、西洋から輸入された外来のもの、という、全く別の発展史を経ているためか、それぞれの教育システムの間にあまりに交流がない感があります。演劇表現を学ぶプロセスで歌唱技術の訓練プログラムはほとんどないし、オペラ表現を学ぶ過程では、演技表現を学ぶプロセスが非常におろそかにされている感がある。結果的に、オペラ歌手の方々の演技、というのは、どんなに演技が上手と言われている人でも、どこか素人っぽさが抜けないもの。舞台表現、Stage Performance、という言葉で同じカテゴリーで共に発達してきた、欧米の演劇とオペラの関係に比べて、日本のそれはあまりにも距離がありすぎる。もっとうがった見方をすれば、西洋文化の象徴としてのオペラを、歌舞伎や大衆演劇に根差した演劇という表現よりも高位に置きたがるような、不思議な「階級意識」すら感じることがあります。

そんな日本で、ブリテンのこの作品を上演するのは相当難易度が高いと思われましたが、演者の皆さんの大熱演と、せんがわ劇場、という、ある意味観客と演者が一体になりやすい劇場の力、飯塚励生さんのエネルギッシュな演出のおかげで、全体の流れはとてもスムーズだったと思います。

そして、何よりも、音楽のクオリティの高さ。子供の音楽教育を念頭に書かれたオペラでありながら、ブリテンの音楽はオーケストラ伴奏を中心に極めて雄弁で、子供や聴衆が歌いやすい覚えやすいメロディーだけでなく、時々胸をえぐるような情感や痛烈なメッセージを秘めていたりする。北は、幸運にも、「ジャンニ・スキッキ」に始まる東京室内歌劇場のせんがわ劇場のシリーズを全部拝見しているんですが、今回の舞台はその中でも、アンサンブルのレベルが非常に高かった気がします。特に子供たちのアンサンブルは、煙突そうじの少年を煙突から引っ張り出すシークエンスや、おふろの合唱といった祝祭的な部分、さらに、煙突そうじの少年の境遇に同情するリリカルなアンサンブルなど、表現のダイナミクスの大きさとくっきりした輪郭で、実にコントラスト豊かに表現されていて、フィナーレの底抜けに祝祭的な雰囲気に、北は思わず涙が出そうになりました。

子供たち、あるいは劇団員のリーダー格となる男役を演じた大津は、GAGで何作かのストレートプレイや朗読劇に出演したこともあり、オペラ歌手としては演劇的なスキルの高い部類に入ると思います。とはいえ、ブリテンの原作自体が、子供が演じることを前提として書かれた作品ということもあり、個々の子役の個性があまりはっきりと描き分けられているわけではありません。役作りにあたっては、大津なりに、「イギリス上流階級の長男として生まれた13歳の男の子が、貧しい労働者階級の子供が置かれている境遇を知った時、どんな表情をするか、どんなふるまいをするか」と自問自答しながら取り組んだそうです。共演者の皆さんにも恵まれ、生まれて初めてノブリス・オブリージを学んだ男の子の姿を演じ切りました。

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 煙突の中に閉じ込められたサムくんをみんなで救い出そうとするシーン。

 

一方、もう一人のGAG団員、北は、ベースの一員として参加する府中の混声合唱団「麗鳴」の定期演奏会に出演。ベースの一員として歌うだけでなく、演出付きステージ、三沢治美編曲の懐メロメドレー「LOVE」の演出、及び演者として出演しました。

民謡を素材とする合唱曲のステージ、三善晃「地球へのバラード」、萩原英彦「白い木馬」という、昭和を代表する合唱曲の抜粋、そして、懐メロメドレー、さらに、平成を代表する合唱作曲家、千原英喜の新作「心が愛にふるえるとき」と、実に盛りだくさんなステージ。入場無料ということもあり、「ちょっと近くを散歩していて立ち寄りました」なんていうお客様まで含めて、会場は400人以上のお客様でほぼ満席状態となりました。このブログでは、特に印象に残った2つのステージを取り上げてレポートしたいと思います。

まずは、北が演出を担当した「LOVE」。取り上げられた懐メロは、「ゴンドラの唄」「東京ブギウギ」「恋のバカンス」「瀬戸の花嫁」「夜明けのスキャット」「喝采」「どうにもとまらない」「愛燦々」。

1960年代から70年代の、愛をテーマにした懐メロ、ということで、演出を考えた時に、真っ先に頭に浮かんだのは、黒澤明の「生きる」で、志村喬が公園のブランコに乗って、しみじみと歌う「ゴンドラの唄」。そこで、ブランコを舞台上に設定してみたいな、と思った時に、鉄拳さんの名作アニメ「振り子」が思い浮かびました。ブランコを一つの軸にして、人生を描いてみるってのはどうだろうか、と。

 「ゴンドラの唄」で、昔の懐かしい日々を思い出した老人たちが、「東京ブギウギ」で、死別した愛する人との出会いを思い出し、「恋のバカンス」「瀬戸の花嫁」「夜明けのスキャット」でその愛の日々を追体験。そして、「喝采」で悲しい別れを思い出す。自暴自棄になった「どうにもとまらない」を経て、現代に戻り、「愛燦々」で、再び明日に向かって歩み出す・・・という流れを思いついて、鉄拳さんの「振り子」が残酷な時の流れを象徴していたように、ブランコが最後に未来に向かって伸びる輝く道になる、という絵が浮かんで、演出の基本線が決まりました。

あとは、団員さんの群舞の中に、何かしら統一した小道具を使えないか、と思って、思いついたのが、扇子。娘の学校の体育祭の応援交歓で、毎年素晴らしいマスゲームを見ることができるのだけど、ある学年が、同色の扇子をぱっと開いたり閉じたりする演出をしていたことがあり、これがすごく印象的だったので、一度使ってみたいと。

 そうやって作り上げたステージ、演奏会終演後、編曲の三沢先生には、「楽しそうでいい演奏でしたけど、演出はちょっと意味がよく分かりませんでした」と、かなり厳しいお言葉もいただいてしまい、演出意図が客席に十分伝わったとは言えなかったかも、と反省しきり。ただ、団員さんたちの協力、共演者の皆さんの奮闘、あと、「夜明けのスキャット」で演者たちが見せる印象的なダンスを振付けてくれた、ガレリア座の振付師、藤井明子さんのご協力もあって、何より団員さんたちが楽しく舞台を作ってくれました。その楽しさは、十分客席に伝わったようです。

そして、もう一つのステージは、何と言っても千原英喜先生の新作「心が愛にふるえるとき」。千原先生の作品は、以前お世話になった大久保混声合唱団の「ラプソディ・イン・チカマツ」を聞いた時、鳴り物や義太夫などのケレン味よりも、底流に流れ続ける豊饒な和音の響きに感動して、一度しっかり歌いたい、と思っていたのでした。今回、指揮者の中館先生が、「この曲は麗鳴に合っていると思う」と持ち込んできたこの「心が愛にふるえるとき」は、鳴り物も、邦楽の手法も一切なく、非常にスタンダードな合唱曲。でもそこに綴られている和音や、変則的なリズム、あるいは大陸のメロディーは、これまでの千原作品にあった東洋と西洋を音楽で融合させるアプローチと無縁ではありません。そして語られる五木寛之の詩のテーマは、まさに、日本海を隔てた大陸と日本に引き裂かれた運命を、飛び越えよう、思いをつなごうとする望郷と愛の物語。

「日本海を歌った部分もありますけど、日本海よりももっと広い大海原を感じてほしいんです。鑑真が大陸から日本に渡ってきた時に彼が越えてきた南シナ海の波とかね。そういうスケールの大きい音楽を作ってほしい」

お忙しい中、本番直前のリハーサルに付き合ってくださって、本番も最後まで聞いてくださった千原先生が、リハーサルの際におっしゃっていたお言葉。今回の演奏会の大きなテーマである、「故郷」と「愛」を、地球スケールで描き出した素晴らしい曲でした。

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 リハーサルで、千原先生と一緒に全体写真

 

さて、3月の本番も終わって、息つく間もなく、次は4月冒頭の本番が控えています。4月の舞台では、大津が歌を、北がナレーションを担当。詳細については別途、このブログでご案内していきます。今後ともGAG団員の活動をご支援賜りますよう、何卒よろしくお願いいたします!