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GAG(Galleria Actors Guild)は、アマチュアオペラ制作集団「ガレリア座」で知り合った大津佐知子と北教之が、1996年に結成した劇団です。二人芝居を中心とした少人数の演劇・朗読劇などを不定期に上演し続け、2013年には第十回公演を開催しました。演劇だけでなく、歌曲なども交えたお茶会などを今後も発表し続けていきます。

3月初旬のGAG団員出演舞台、無事終演いたしました!

先日告知いたしました、GAG団員出演舞台、無事終演いたしました!

 

まずは、大津出演の舞台、オペラを作ろう!「小さな煙突そうじ」のレポートから。

大津は、第一幕・第二幕では、劇団員ブルース、第三幕では、煙突そうじのサムを助けるブルック家の長男、ゲイ・ブルックを演じました。

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第一幕・第二幕、劇団員ブルースくん

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第三幕、煙突そうじの少年サム役の植木稚花さんと、ゲイ・ブルックくん

第一幕と第二幕では、劇団員たちが、オペラ「小さな煙突そうじ」を作る、というオペラ制作の舞台裏のお話を、音楽のほとんどないストレートプレイとして見せ、そこで聴衆も一緒に参加する合唱の練習をし、そして、第三幕のオペラ本編となる、という、二重三重の仕掛けを持ったこの舞台。

日本では、演劇、という舞台表現が、歌舞伎から派生、あるいは海外から輸入されたとしても、あくまで歌舞伎のアンチテーゼとして発展したという土着性を持っている一方で、オペラという舞台表現はもともと国内に根っこがない、西洋から輸入された外来のもの、という、全く別の発展史を経ているためか、それぞれの教育システムの間にあまりに交流がない感があります。演劇表現を学ぶプロセスで歌唱技術の訓練プログラムはほとんどないし、オペラ表現を学ぶ過程では、演技表現を学ぶプロセスが非常におろそかにされている感がある。結果的に、オペラ歌手の方々の演技、というのは、どんなに演技が上手と言われている人でも、どこか素人っぽさが抜けないもの。舞台表現、Stage Performance、という言葉で同じカテゴリーで共に発達してきた、欧米の演劇とオペラの関係に比べて、日本のそれはあまりにも距離がありすぎる。もっとうがった見方をすれば、西洋文化の象徴としてのオペラを、歌舞伎や大衆演劇に根差した演劇という表現よりも高位に置きたがるような、不思議な「階級意識」すら感じることがあります。

そんな日本で、ブリテンのこの作品を上演するのは相当難易度が高いと思われましたが、演者の皆さんの大熱演と、せんがわ劇場、という、ある意味観客と演者が一体になりやすい劇場の力、飯塚励生さんのエネルギッシュな演出のおかげで、全体の流れはとてもスムーズだったと思います。

そして、何よりも、音楽のクオリティの高さ。子供の音楽教育を念頭に書かれたオペラでありながら、ブリテンの音楽はオーケストラ伴奏を中心に極めて雄弁で、子供や聴衆が歌いやすい覚えやすいメロディーだけでなく、時々胸をえぐるような情感や痛烈なメッセージを秘めていたりする。北は、幸運にも、「ジャンニ・スキッキ」に始まる東京室内歌劇場のせんがわ劇場のシリーズを全部拝見しているんですが、今回の舞台はその中でも、アンサンブルのレベルが非常に高かった気がします。特に子供たちのアンサンブルは、煙突そうじの少年を煙突から引っ張り出すシークエンスや、おふろの合唱といった祝祭的な部分、さらに、煙突そうじの少年の境遇に同情するリリカルなアンサンブルなど、表現のダイナミクスの大きさとくっきりした輪郭で、実にコントラスト豊かに表現されていて、フィナーレの底抜けに祝祭的な雰囲気に、北は思わず涙が出そうになりました。

子供たち、あるいは劇団員のリーダー格となる男役を演じた大津は、GAGで何作かのストレートプレイや朗読劇に出演したこともあり、オペラ歌手としては演劇的なスキルの高い部類に入ると思います。とはいえ、ブリテンの原作自体が、子供が演じることを前提として書かれた作品ということもあり、個々の子役の個性があまりはっきりと描き分けられているわけではありません。役作りにあたっては、大津なりに、「イギリス上流階級の長男として生まれた13歳の男の子が、貧しい労働者階級の子供が置かれている境遇を知った時、どんな表情をするか、どんなふるまいをするか」と自問自答しながら取り組んだそうです。共演者の皆さんにも恵まれ、生まれて初めてノブリス・オブリージを学んだ男の子の姿を演じ切りました。

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 煙突の中に閉じ込められたサムくんをみんなで救い出そうとするシーン。

 

一方、もう一人のGAG団員、北は、ベースの一員として参加する府中の混声合唱団「麗鳴」の定期演奏会に出演。ベースの一員として歌うだけでなく、演出付きステージ、三沢治美編曲の懐メロメドレー「LOVE」の演出、及び演者として出演しました。

民謡を素材とする合唱曲のステージ、三善晃「地球へのバラード」、萩原英彦「白い木馬」という、昭和を代表する合唱曲の抜粋、そして、懐メロメドレー、さらに、平成を代表する合唱作曲家、千原英喜の新作「心が愛にふるえるとき」と、実に盛りだくさんなステージ。入場無料ということもあり、「ちょっと近くを散歩していて立ち寄りました」なんていうお客様まで含めて、会場は400人以上のお客様でほぼ満席状態となりました。このブログでは、特に印象に残った2つのステージを取り上げてレポートしたいと思います。

まずは、北が演出を担当した「LOVE」。取り上げられた懐メロは、「ゴンドラの唄」「東京ブギウギ」「恋のバカンス」「瀬戸の花嫁」「夜明けのスキャット」「喝采」「どうにもとまらない」「愛燦々」。

1960年代から70年代の、愛をテーマにした懐メロ、ということで、演出を考えた時に、真っ先に頭に浮かんだのは、黒澤明の「生きる」で、志村喬が公園のブランコに乗って、しみじみと歌う「ゴンドラの唄」。そこで、ブランコを舞台上に設定してみたいな、と思った時に、鉄拳さんの名作アニメ「振り子」が思い浮かびました。ブランコを一つの軸にして、人生を描いてみるってのはどうだろうか、と。

 「ゴンドラの唄」で、昔の懐かしい日々を思い出した老人たちが、「東京ブギウギ」で、死別した愛する人との出会いを思い出し、「恋のバカンス」「瀬戸の花嫁」「夜明けのスキャット」でその愛の日々を追体験。そして、「喝采」で悲しい別れを思い出す。自暴自棄になった「どうにもとまらない」を経て、現代に戻り、「愛燦々」で、再び明日に向かって歩み出す・・・という流れを思いついて、鉄拳さんの「振り子」が残酷な時の流れを象徴していたように、ブランコが最後に未来に向かって伸びる輝く道になる、という絵が浮かんで、演出の基本線が決まりました。

あとは、団員さんの群舞の中に、何かしら統一した小道具を使えないか、と思って、思いついたのが、扇子。娘の学校の体育祭の応援交歓で、毎年素晴らしいマスゲームを見ることができるのだけど、ある学年が、同色の扇子をぱっと開いたり閉じたりする演出をしていたことがあり、これがすごく印象的だったので、一度使ってみたいと。

 そうやって作り上げたステージ、演奏会終演後、編曲の三沢先生には、「楽しそうでいい演奏でしたけど、演出はちょっと意味がよく分かりませんでした」と、かなり厳しいお言葉もいただいてしまい、演出意図が客席に十分伝わったとは言えなかったかも、と反省しきり。ただ、団員さんたちの協力、共演者の皆さんの奮闘、あと、「夜明けのスキャット」で演者たちが見せる印象的なダンスを振付けてくれた、ガレリア座の振付師、藤井明子さんのご協力もあって、何より団員さんたちが楽しく舞台を作ってくれました。その楽しさは、十分客席に伝わったようです。

そして、もう一つのステージは、何と言っても千原英喜先生の新作「心が愛にふるえるとき」。千原先生の作品は、以前お世話になった大久保混声合唱団の「ラプソディ・イン・チカマツ」を聞いた時、鳴り物や義太夫などのケレン味よりも、底流に流れ続ける豊饒な和音の響きに感動して、一度しっかり歌いたい、と思っていたのでした。今回、指揮者の中館先生が、「この曲は麗鳴に合っていると思う」と持ち込んできたこの「心が愛にふるえるとき」は、鳴り物も、邦楽の手法も一切なく、非常にスタンダードな合唱曲。でもそこに綴られている和音や、変則的なリズム、あるいは大陸のメロディーは、これまでの千原作品にあった東洋と西洋を音楽で融合させるアプローチと無縁ではありません。そして語られる五木寛之の詩のテーマは、まさに、日本海を隔てた大陸と日本に引き裂かれた運命を、飛び越えよう、思いをつなごうとする望郷と愛の物語。

「日本海を歌った部分もありますけど、日本海よりももっと広い大海原を感じてほしいんです。鑑真が大陸から日本に渡ってきた時に彼が越えてきた南シナ海の波とかね。そういうスケールの大きい音楽を作ってほしい」

お忙しい中、本番直前のリハーサルに付き合ってくださって、本番も最後まで聞いてくださった千原先生が、リハーサルの際におっしゃっていたお言葉。今回の演奏会の大きなテーマである、「故郷」と「愛」を、地球スケールで描き出した素晴らしい曲でした。

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 リハーサルで、千原先生と一緒に全体写真

 

さて、3月の本番も終わって、息つく間もなく、次は4月冒頭の本番が控えています。4月の舞台では、大津が歌を、北がナレーションを担当。詳細については別途、このブログでご案内していきます。今後ともGAG団員の活動をご支援賜りますよう、何卒よろしくお願いいたします!

大津出演のオペラ「小さな煙突そうじ」、北出演の合唱団「麗鳴」演奏会、いよいよ来週!

GAG団員の大津、北は現在散開活動中なのですが、それぞれの所属団体の公演がいよいよ来週に迫ってまいりました。なぜか開催時期が重なってしまい、一部の友人には、「オペラと大津さんが好きな方はせんがわ劇場へ、合唱と北さんが好きな方は府中の森へ」という踏み絵状態になっている、という大変申し訳ない事態。相互調整するわけにもいかないので、ひらにご容赦を。

 

まずは、大津出演のオペラ「小さな煙突そうじ」。子供向けの音楽も数多く書いているブリテンが、子供でも楽しめるように、と、様々な仕掛けを盛り込んだ楽しいオペラ。前半ではオペラのメイキングシーンを「お芝居」として演じ、そこでは客席も一緒になってオペラの曲を練習。後半の「オペラ」ではみんなで一緒に歌う、という「聴衆参加型」のオペラです。楽しいだけではなく、煙突そうじの少年に象徴される、当時の英国社会で社会問題化していた児童労働を激しく告発した時代性も備え、お子様から大人まで楽しめる味わい深い作品。

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唐木みゆさんのイラスト、ほんとに可愛いなー。

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 演出はおなじみ、飯塚励生さん

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大津は、今回は、煙突そうじの少年を助け出すブルック家の長男、ゲイ・ブルック役、という男の子の役です。このせんがわ劇場のシリーズで「市場のかみさんたち」以来、4作目の出演ということもあり、出演者の間ではすっかり「お兄ちゃん」と呼ばれているそうな。

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というわけで、今回購入したウィッグ。さて、どんな「お兄ちゃん」ぶりを見せてくれるか、乞うご期待!

 

大津出演の回は、以下となります。チケットのご用命は、大津、またはGAG連絡先まで!

3月3日(木)14時

3月4日(金)14時

3月5日(土)13時

3月6日(日)16時30分

 

f:id:GalleriaActorsGuild:20150128212447j:plain←連絡先はこちらです!

 

さて、もう一つの周知。3月5日(土)午後、上述の踏み絵状態になっておりますが、北出演の合唱団「麗鳴」の第23回定期演奏会が開催されます。

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演奏する曲のテーマが盛り込まれているんですけど、分かるかな?

 

今回、北はベースの一員として参加するのと共に、演出付きのステージの企画・演出、そしてパントマイムの役者としても参加しています。

 

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これは本番会場で少し前に行ったリハーサルの写真。中央でなにやら不思議なものに腰かけようとしているのが北です。一体これは何なのでしょう?というのは、ご来場いただいてのお楽しみ。

 

今回の定期演奏会は4ステージ構成。第一ステージの民謡を集めたステージでは、間宮芳生編曲の女声合唱曲「五木の子守歌」や、キングズシンガーズの混声合唱編曲「竹田の子守唄」など、耳慣れた民謡のメロディーを合唱ならではの色彩豊かなサウンドでお楽しみいただけます。

第二ステージでは、麗鳴が得意とする昭和の合唱曲の名作、三善晃「地球へのバラード」と荻原英彦「白い木馬」から数曲ずつ。

第三ステージは三沢治美編曲の懐メロメドレー「LOVE」。上述の演出付きステージです。

 

そして何より一番の目玉は、第四ステージに取り上げた、五木寛之作詞、千原英喜作曲「心が愛にふるえる時」。日本海を隔てて引き裂かれた人々の望郷の思いが、大陸の風を思わせるスケールの大きな和声で描かれていきます。今年発行されたばかりの新譜ですが、これからいろいろな合唱団で是非取り上げてほしい、歌えば歌うほど味わいの深まる名曲です。

 

オペラと合唱、というと、客層も重なるようで重ならないんですが、どちらも表現手段は、「声」。声による表現をどこまで極めることができるか、GAG団員それぞれの追求の日々が続いております。一人でも多くのお客様に、その成果を届けることができますように。仙川と府中にて、多数のご来場をお待ちしております!

2016年上半期、GAG団員出演舞台の予定です

2016年が始動しました!

あけましておめでとうございます!

2016年が皆様にとって、輝かしい一年でありますよう!

 

さて、今年も年明け早々から、GAG団員の出演舞台がいくつか予定されています。

今年の上半期、既に決まっている舞台、企画中の舞台含め、今後の予定を並べてみます。

 

★1月10日(日)

東京室内歌劇場 2016年新春メンバーズコンサート

13:30開演

於:渋谷区総合文化センター大和田 伝承ホール

 

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大津の東京室内歌劇場での初舞台となった、オッフェンバック作曲「市場のかみさんたち」を、演奏会形式でお送りします。

大津は、初舞台でいただいたポワルタペ夫人役を再び歌います。

新春初歌いは、オッフェンバックの底抜けに明るいオペレッタで!

 

★3月2日(水)~3月6日(日)東京室内歌劇場スペシャルウィーク2016

ブリテン作曲「オペラを作ろう!!<小さな煙突そうじ>」

於:調布市せんがわ劇場

 

春先の仙川を音楽で彩る風物詩となりました、東京室内歌劇場のスペシャルウィークinせんがわ劇場

今年のオペラはブリテンの「小さな煙突そうじ」。

一幕・二幕はお客様も参加してのお芝居、そして、会場のみんなで作り上げる第三幕のオペラ。

大津は、ゲイ・ブルック、という、煙突掃除の少年を救う、ブルック家の子供たちの長男役で出演します。

せんがわ劇場でお客様も一緒に、オペラを一つ作り上げてみませんか?

 

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★3月5日(土)混声合唱団麗鳴 第23回定期演奏会

於:府中の森芸術劇場 ウィーンホール

 

今年の麗鳴の定期演奏会は、日本民謡三善晃「白い木馬」、萩原英彦「地球へのバラード」、千原英喜の新譜、そして、懐メロメドレーと、盛りだくさん。

北はベースの団員として出演。演出付きステージの演出その他をお手伝いします。

「ふるさと」、そして「愛」をテーマに、バラエティあふれる合唱曲の数々をお楽しみください!

 

★4月1日(金)東京シティオペラ協会公演/オペラで綴る愛のシーン

於:仙川フィックスホール

 

大津が米国から帰国した後、初のリサイタルを開いた仙川アヴェニューホールが、フィックスホールと名前を変えて復活!

そのこけら落としウィークの初日を飾る4月1日の公演で、大津が、「ランメルモールのルチア」のハイライト公演に、タイトルロールで出演することになりました!

長年目標にしてきた「ルチア」への初挑戦、乞うご期待!

 

★4月3日(日)ケイ企画/ガラコンサートvol 1/vol 2

於:仙川フィックスホール

 

同じくフィックスホールのこけら落としウィーク企画の一つとして開催されるオペラガラコンサート。昼の部、夜の部と、総勢20名以上のオペラ歌手が歌声を披露します。大津は夜の部に出演予定。メノッティのオペラ「領事」から、マグダのアリアを歌います。

 

★7月初旬

お待たせしました!GAG本公演を企画中です!詳細決まりましたら別途周知いたします!

 

★7月30・31日 東京シティオペラ協会公演 マスネ作曲「シンデレラ」

於:渋谷エレクトーンシティ

大津出演予定。

 

9月には、その他の舞台がいくつか企画されています。こちらも詳細きまりましたら、このブログで周知してまいります。

 

2016年も盛りだくさん。できるだけ多くのお客様を笑顔にできるよう頑張ります!

今年もGAGを何卒よろしくお願いいたします!

「悪魔のロベール」終演いたしました!

2015年もいよいよ暮れようとしております。みなさま如何お過ごしでしょうか。

さて、先日来このブログでも宣伝してまいりました、ガレリア座第27回公演「悪魔のロベール」。先日12月20日(日)パルテノン多摩大ホールにて上演、無事終演いたしました。
ご来場いただきました皆様、誠にありがとうございました!

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第二幕、ロベールへの思いを歌う王女イザベル。演じるのは大津。

 

マイアベーアの「悪魔のロベール」がパリで初演されたのは1831年。その前年1830年に、パリでは七月革命がおこり、ブルジョワジーの王とも言われるオルレアン公ルイ・フィリップによる立憲君主制が開始されたばかり。既に経済的に社会を牛耳っていたパリのブルジョワジーが、名実ともに、フランスの支配階級としてわが世を謳歌しはじめたこの時代。そのブルジョワたちの娯楽を支えるために、劇場に流れ込んだ潤沢な資金と、新時代の勢いをそのままに、豪奢な劇場的仕掛けを縦横に駆使したフランスグランドオペラが誕生します。その記念すべき第一作目が、「悪魔のロベール」でした。地獄の合唱、妖艶な尼僧の死霊たちのバレエ、荘厳なオルガン伴奏による合唱、ソリストの超絶技巧が展開される歌唱と、ケレン味たっぷりの物語、そして重厚なオーケストレーション。印象的かつ分かりやすい旋律が数多く盛り込まれ、当時のパリで大人気を博した、というから、当時のパリの街角では、このオペラに出てくる歌がしょっちゅう口ずさまれていたのだろうな、と思います。

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ロベールの友人、実はロベールの父親である悪魔ベルトランは、奸計によって息子ロベールを地獄に引きずり込もうと画策します。演じるのは北。

 

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ベルトランの策略と尼僧の死霊に導かれ、悪魔の魔力を持つ枝を手にするロベール。

 

当時大流行した「悪魔のロベール」へのオマージュは他の音楽作品やミュージカルにも数多くみられます。ショパンは、「マイアベーアは神の領域に達した」と感激し、「チェロとピアノのための『悪魔のロベール』の主題による協奏的大二重楽曲」という大層なタイトルの曲を書いています。なんとなくそういう血沸き肉踊っちゃうオペラなんですね。リストは、「鬼のロベールによる回想」という変奏曲を書きました。また、コルンゴルドの「死の都」のヒロイン、マリエッタという踊り子が出かけるのは、彼女がバレリーナとして出演している「悪魔のロベール」の舞台のリハーサル。「死の都」の中では、マリエッタが「悪魔のロベール」のバレエシーンを実際に演じる場面も挿入されています。また、今もブロードウェイでロングラン上演されている「オペラ座の怪人」では、冒頭のオークションの場面で、「悪魔のロベール」で使われた舞台道具が競売にかけられている、というシーンが出てきます。

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第四幕、意に染まぬ結婚を前に悩む王女イザベルをよそに、結婚を祝う民衆の合唱。

 

このオペラが歴史の中に埋もれ、つい最近まで、本場欧州でもほとんど再演の機会がなかったのは、あまりにも大衆に受け入れられ、大人気を博してしまったこの作品とマイアベーア自身に対して、後世の作曲家が激しく嫉妬したからだ、という説が多く聞かれます。作品の魅力や完成度とは別のところで生まれた、「マイアベーアみたいな大衆受けする音楽を書いてたまるか」という屈折した反発。特にその反発を様々な形で残しているのが、少し時代を下った1850年代のパリを席巻した、オペレッタの王様、オッフェンバック。彼が生きたナポレオン三世第二帝政時代そのものが、ルイ・フィリップ王政時代のアンチテーゼであった、という時代背景もあるのでしょうが、オッフェンバックオペレッタ作品の中には、マイアベーアのパロディと思われる場面や音楽が多数登場します。そうやって罵倒し笑いものにしながら、オッフェンバックはどこかでマイアベーア作品への憧れと敬意を捨てきることができず、彼が死ぬ間際に書いた唯一のオペラ作品「ホフマン物語」には、まさに「悪魔のロベール」のコピーと思えるような男声合唱やクプレが登場します。

オッフェンバックに代表される「悪魔のロベール」への敵視と、屈折した執着は、後世の音楽家にも綿々と受け継がれていきます。グノーの「ファウスト」、ビゼーの「カルメン」、あるいはドイツのウェーバー魔弾の射手」から、ヴェルディの「ドン・カルロ」に至るまで、「悪魔のロベール」が生み出した舞台設定や音楽形式の影響を指摘できる作品は枚挙にいとまがありません。しかし、それだけの影響力を及ぼしながらも、オリジナルの作品自体を蔑視する空気はなかなか消えることはなく、この作品は長く歴史の中に埋もれてきました。やっと最近になって、欧州でもマイアベーアの再評価の流れが生まれつつあり、「悪魔のロベール」も、1985年、本場パリで、当時の豪奢な舞台をそのまま再現したかのようなスペクタクルな舞台が上演され、2012年に英国ロイヤルオペラハウスが上演した舞台もDVD化されています。

しかし、この作品が埋もれたもう一つの理由として、歌い手にもオーケストラにも高度な技巧が要求され、しかも各楽曲が長大であり、演者の負担が相当大きいことがあげられると思います。分かりやすい旋律の裏返しとして、音楽的には単純で若干単調になる側面もあり、決して取っつきやすい作品とはいえません。反復横跳びをひたすら繰り返せ、みたいな演奏が要求される箇所もある。テレビも映画もなかった時代、数少ない贅沢な娯楽としてオペラに熱狂したパリのブルジョワたちは、その豊饒さに狂喜したんでしょうが、現代の我々からするとかなりの忍耐力と体力を要求される。欧州ですらほとんど上演されることのないこの作品は、当然のことながら、日本でもこれまで紹介されたことがありませんでした。

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ロベールの乳兄妹、アリスから、ロベールが悪魔の誘惑に心動かされていることを告げられるイザベル。

 

オッフェンバックの研究家であるガレリア座主宰の八木原良貴氏が、オッフェンバックがその作品の中で頻繁に取り上げている、マイアベーア、という作曲家に興味を持ち、その作品の魅力を再発見し、これを日本初演としてガレリア座で取り上げたい、と言い出した時、団員の誰もが、無数の「?」マークを空中に浮かばせました。「マイアベーアって誰?」「悪魔のロベールって何?」とりあえず正体はよく分からんが、面白そうな作品と言うから取り組んでみるかね、と手を出してしまったのが運の尽き。まさに未踏の雪原をひたすらラッセルを繰り返しながら登っている登山隊のような日々がひたすら続きました。

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王女イザベルという、超高難度のダジリタを要求される役をもらった大津。合唱を従えた大きなフィナーレ曲で聞かせる高音のダジリタだけでなく、物語のクライマックスには、悪魔に心を奪われたロベールに、人間の心を取り戻して欲しいと切々と訴える長いカヴァティーナがあります。ハープとアングレという二つの楽器だけを伴奏楽器として、ロベールの心の氷を溶かしていくこのカヴァティーナは、「悪魔のロベール」の4年後の1835年に作曲された「ランメルモールのルチア」の狂乱の場面での、フルートとソプラノの哀切極まりない歌唱の前触れともいえるかもしれません。日々、それでいいのかと楽譜と会話を続けながら、本番には多くのお客様が「感動した」と声をかけてくださいました。

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どうか、本当のあなたに戻って、と、ハープとアングレとソプラノだけが歌いあげるカヴァティーナ。

 

悪魔ベルトランという、物語の軸になる役をもらった北にとっても、大変な挑戦となりました。未熟な歌唱技術を精一杯背伸びさせて、今まで経験したことのない二重唱でのカデンツァ、アカペラ無伴奏での三重唱、そして、低音はミのフラットから高音はファのシャープまで、二オクターブを超える音域の楽譜をなんとか歌い切りました。

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大団円、悪魔の誘惑を退けたロベールを、救済と母性の合唱が包み込む。

 

年の瀬も押し迫った12月の多摩センターに足を運んでくださったお客様皆様に感謝申し上げると共に、2015年を素晴らしい公演で締めくくらせてくれたガレリア座の共演者の皆さん、スタッフの皆さん全てに感謝です。

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カーテンコール、やり終えた充実感で笑顔の大津と北を、オケピットから団員が撮影してくれました。

 

2015年、大変お世話になりました。そして2016年、GAGの二人の出演舞台が、年明け早々から目白押しです!またこのブログで宣伝周知させていただきますので、何卒よろしくお願いいたします!みなさま、よいお年をお迎えください!

 

「悪魔のロベール」第二幕の日本初演画像です!

急激に気温が下がり、秋も深まってきた今日この頃、皆様いかがお過ごしですか?

さて、先日もこのブログでご案内いたしました、12月20日に上演予定のガレリア座公演、マイアベーア作曲「悪魔のロベール」。先週末8日(日)、ガレリア座がいつもお世話になっている、新宿区住吉町社会教育会館で、2幕のみの抜粋上演が開催されました!

悪魔の子ロベールが、愛するシチリア王女イザベルの許を訪れ、その愛を確かめますが、悪魔ベルトランの奸計によって、愛の証しとなるはずの御前試合に出場できなくなる、というのが2幕のお話。長大なロベール(テノール)のアリア、ダジリタを多用したイザベル(ソプラノ)のアリアから、ロッシーニを思わせる二人の二重唱、そして、御前試合の開催を告げる勇ましい合唱、傍らでほくそえむ悪魔ベルトランの独白、と、音楽的にも実に盛りだくさんの幕です。

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王女イザベル(大津が演じます)を合唱が囲む2幕フィナーレ。

住吉町社会教育会館が毎年開催している、「あけぼのフェスタ」という地域文化祭での上演。いつもお世話になっている皆様を前にした、いわば身内向けの上演ではありますが、この音楽が日本で、お客様を前に上演されるのは、これが初めてのこと。音楽の魅力、物語の魅力をしっかり伝えられるよう、団員それぞれに精一杯演じさせていただきました。

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悪魔ベルトランを演じる北と、王女イザベルの大津の2ショットです。

衣装はまだ暫定バージョンで、本番にはまた少し違った味付けが加わるかもしれません。さらにさらにスケールアップして、この歴史的作品の魅力をお伝えするべく、頑張りたいと思います。12月20日(日)、パルテノン多摩で、皆さんをお待ちしております。日本初演の歴史的瞬間を見逃すな!

北の今年最大の挑戦、マイアベーア「悪魔のロベール」チケット販売開始です!

急激に気温が下がってきました。空気も乾燥し、歌い手の皆さんにはちょっとつらい季節がやってきましたが、皆様いかがお過ごしですか?

さて、今回は、以前からこのブログでも予告しておりました、12月20日(日)に上演される、ガレリア座公演「悪魔のロベール」についての告知です。

チラシが完成し、チケット販売が開始されました!

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ガレリア座 第27回公演

G.マイアベーア作曲 歌劇「悪魔のロベール」

(全5幕 日本語訳詞上演/日本初演

2015年12月20日(日)開演13:30(開場13時)

於 多摩市立総合文化施設パルテノン多摩”大ホール

S席3,000円 A席2,500円 B席2,000円 (全席指定)

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GAG団員の大津佐知子は、主人公ロベールと恋に落ちる王女イザベルを、北教之は、ロベールの友人、実はかれの父親である悪魔ベルトランを演じます。

ヨーロッパに中世から伝わる悪魔伝説と、実在のノルマンディー公「ロベール悪魔公」が結びついたこのお話。悪魔の魅力に惑わされ、その子供を身ごもってしまったベルテ姫。彼女が産み落とした、悪魔の子供、ロベールは、その体に流れる悪魔の血脈そのままに、暴虐の限りを尽くし国を追われますが、旅先で出会った、シチリア王女イザベルとの恋、そして、母ベルテ姫の遺言に、次第に神性を取り戻していきます。ロベールの父親、悪魔ベルトランは、そんな彼を地獄へと誘いますが、ロベールは、父への思いに苦しみながらも、その誘いに背を向け、ベルトランは地獄に消えていきます。

悪魔の合唱、妖艶な亡霊たちの乱舞、悪魔の地獄落ちと、スペクタクルとけれん味にあふれたファンタジックな物語は、ショパンをして、「マイアベーアは神の領域に達した」と感嘆させ、感激のあまり、ショパンは、「チェロとピアノのための『悪魔のロベール』の主題による協奏的大二重奏曲」という曲を書き残しました。同じように、リストも、「『悪魔のロベール』による回想、地獄のワルツ」というピアノ曲を書き残しています。

19世紀前半のパリに激震をもたらしたこの作品、あまりに長大な曲であること、先駆性と古典様式のごった煮のような混沌感がぬぐえないことから、ほとんど上演されることのない埋もれた作品でした。(今回の上演も、一部カットした短縮版となります)

しかし、この作品が、その後に生み出されたフランスグランドオペラの主要な作品に与えた影響力は計り知れないものがあります。実際、「この場面はどう考えても『ホフマン物語』だよなぁ」「このキャラクターは『カルメン』のミカエラだよねぇ」「これはどう考えても『ファウスト』だろ」といった会話が、ガレリア座の練習会場では何度もささやかれています。

音域も広く、ヴェルディを彷彿とさせるようなエネルギッシュな男声二重唱もあれば、当時流行だったアカペラによる長大な三重唱、技巧的なカデンツァなど、歌い手にとっては拷問とも思えるような作品。大津演じる王女イザベルにはアジリタを駆使した超絶技巧が試される大きなアリアがあり、また、北が演じる悪魔ベルトランは、ほぼオペラの準主役といっていいような大役で、北にとっては今年最大の挑戦、ともいえる大変な役になっています。

自分の実力をはるかに超える大変なオペラではありますが、日本初演のこの作品の魅力を、少しでも客席に届けるべく、頑張ります!年末のお忙しい頃とは思いますが、皆様ふるってご来場ください!日本でこの作品を見ることができる機会は、おそらくもう二度とないと思われますよ!!

チケットのご用命は、GAG北まで、是非ご一報いただければ幸いです!

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「椿姫」終演いたしました!

10月3日(土)、くにたち市民芸術小ホールで、東京シティオペラ協会「椿姫」上演。GAG団員の大津佐知子がタイトルロールを演じました。

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このところ、カケスとかリスとか、人間以外のものを多数演じておりましたが、今回はゴージャスに装っております。

くにたち市民芸術小ホールは、350名程度の小さなホールですが、小編成オーケストラも収容できるオケピットもある、とてもいいホールです。小ホールでグランドオペラを上演する、という不可能にも近い企画、と、川村敬一先生がパンフレットに書いておられましたが、舞台上に作り上げられた世界はまさに19世紀半ばのパリ。急激な経済発展で都市に集中した富に群がる女たちと、それを金であがなう男たち。そんな虚飾の世界で男たちの欲に翻弄されるヴィオレッタの孤独。演出の原純先生が、くっきりと描き出したヴェルディの情念の世界。

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ちなみにソファ、クッション、燭台、その他の道具はすべて原さんの私物だそうです。どんなお家に住んでらっしゃるの。

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パパジェルモンを演じるのはガレリア座でもパパジェルモンを演じてくださった神田宇士さん。ソフトな美声が見事です。

大津は歌い手泣かせの超難曲をしっかり歌いこなしながら、持ち前の演技力で、死の予感に怯えながら、愛に最後の命の炎を燃やす、オペラの歴史の中で最も有名な悲劇のヒロインの一人を演じきっていました。一幕からヴィオレッタの周りに死の予感が常に漂っていて、それがヴィオレッタの愛への渇望につながってくる。登場した瞬間から破滅への予感を漂わせるナタリー・デッセイの「ランメルモールのルチア」を連想した方も何人かいらっしゃったようです。

別の日記で、演出を中心に北が感想を書いておりますので、ご興味のある方はそちらもご覧ください。↓こちらです。

d.hatena.ne.jp

耳にするだけで陶然とする矢島正明先生のナレーション、多彩な表現力で歌い手を支えて下さる赤塚博美先生のエレクトーン伴奏と、コレペティトゥアの大杉祥子先生。素晴らしいスタッフと素晴らしい共演者に恵まれ、小さなホールがみっしりとしたヴェルディの音楽とドラマで充たされた時間でした。今後も大津の舞台活動は続いていきますが、今後に向けての大きな財産になった舞台だったと思います。

次は11月のアメリカ音楽、12月のマイアベーアと、GAG団員の関係する舞台が続きます。今後ともGAGをよろしくお願いいたします!